浦和地方裁判所 昭和63年(ワ)1346号 判決 1992年9月08日
原告兼原告小島榮松訴訟承継人(以下、単に「原告」という。)
小島志満
原告小島榮松訴訟承継人(以下、単に「原告」という。)
小山綾子
同
中田幸子
同
村田輝子
同
大田通子
右五名訴訟代理人弁護士
奥野善彦
同
野村茂樹
右訴訟復代理人弁護士
藤田浩司
被告兼脱退被告(以下、単に「被告」という。)
小島一子
同
小島積
右二名訴訟代理人弁護士
小池通雄
被告小島一子、同小島積訴訟引受人(以下、単に「訴訟引受人」という。)
松里株式会社
右代表者代表取締役
西田憲
右訴訟代理人弁護士
河合弘之
主文
一、被告小島積は原告らに対し別紙物件目録記載の土地についてされた浦和地方法務局昭和六参年六月壱五日受付第参六四〇七号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
二、被告小島積は原告らに対し別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。
三、訴訟引受人は原告らに対し別紙株券目録記載(一)の株券を引き渡せ。
四、被告小島積は原告らに対し別紙株券目録記載(二)の株券を引き渡せ。
五、被告らは原告小島志満に対し別紙株券目録記載(三)(四)の株券を引き渡せ。
六、原告らの被告小島一子に対するその余の請求をいずれも棄却する。
七、訴訟費用は被告らの負担とする。
八、この判決は第二ないし第五項に限り仮に執行することができる。
事実
第一、当事者の求める裁判
一、請求の趣旨
1. 主文第一項と同旨。
2. 被告らは原告らに対し別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を明け渡せ。
3. 主文第三項と同旨。
4. 被告らは原告らに対し別紙株券目録記載(二)の株券(以下「本件(二)の株券」という。)を引き渡せ。
5. 主文第五項と同旨。
6. 主文第七項と同旨。
7. 第2ないし第5項につき仮執行の宣言。
二、請求の趣旨に対する答弁
(本案前の申立て)
1. 原告らの訴えをいずれも却下する。
2. 訴訟費用は原告らの負担とする。
(本案に対する申立て)
1. 原告らの請求をいずれも棄却する。
2. 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二、当事者の主張
一、請求原因
1.(1) 本件土地は、承継前の原告小島榮松(以下「榮松」という。)が昭和二九年一二月二七日その前所有者から売買によって取得したものである。
(2) 本件土地については浦和地方法務局昭和六三年六月一五日受付第三六四〇七号による榮松から被告小島積(以下「被告積」という。)への昭和六三年五月二六日贈与を原因とする所有権移転登記がされている。
(3) 被告らは本件土地を共同で占有している。
2.(1) 別紙株券目録記載(一)の株券(以下「本件(一)の株券」という。)及び本件(二)の株券はそれぞれの目録記載の日に榮松が取得し、所有するに至ったものである(なお、目録記載の株主名のうち「小島靖忠」というのは榮松の別名であり、そのほかの名義は榮松が株券を取得するのに利用した架空名である。)。
(2) 被告らは本件(二)の株券を共同して占有している。
(3) 被告らは本件訴え提起当時本件(一)の株券を占有していたところ、訴訟引受人は本件訴訟の係属中本件(一)の株券の占有を取得し、現にこれを占有している。
3.(1) 別紙株券目録記載(三)(四)の株券(以下「本件(三)(四)の株券」という。)はそれぞれの目録記載の日に原告小島志満(以下「原告志満」という。)が取得し、所有するに至ったものである(なお、目録記載の株主名は「小島志満子」となっているが、これは原告志満の別名である。)。
(2) 被告らは本件(三)(四)の株券を共同で占有している。
4. 榮松は本訴の係属中である昭和六四年一月二日死亡し、その妻である原告志満、子である原告小山綾子、同中田幸子、同村田輝子、同大田通子及び被告小島一子(以下「被告一子」という。)において、その法定相続分(原告志満につき二分の一、そのほかの者につきそれぞれ一〇分の一)の割合に応じて、榮松の本件土地及び本件(一)(二)の株券にかかる所有権(共有持分)を承継取得し、訴訟上の地位を承継した。
よって、(1)原告らは、その各共有持分に基づき、被告積に対し本件土地についてされた前記所有権移転登記の抹消登記手続を、被告らに対し本件土地の明渡しを、(2)原告らは、本件(一)の株券の各共有持分に基づき、訴訟引受人に対しその引渡しを、本件(二)の株券の各共有持分に基づき、被告らに対しその引渡しを、(3)原告志満は、本件(三)(四)の株券の所有権に基づき、被告らに対しその引渡しをそれぞれ求める。
二、本案前の主張
1. 本件訴えは原告志満が榮松の財産管理人として提起したものである。被告積は榮松が原告志満との間にもうけた五人の女子のうち長女である被告一子の長男であり、榮松は被告積を自己の後継者として認めていた。そのために榮松は被告積に対し本件土地及び本件各株券(原告志満名義の株券も実質上は榮松の所有である。)を贈与したのである。ところが、原告志満はこれを快く思わず、被告積が本件土地及び本件各株券を取得するのを阻止するためにその地位を利用して本件訴えを提起したのであるから、原告志満による本件訴えの提起は信義則に反し、訴権の濫用である。
2. 原告らは、通謀のうえ、榮松名義の公正証書作成のための委任状を偽造し、榮松の財産を原告志満へ遺贈する趣旨の公正証書を作成した。このように原告らには榮松との関係で明白な相続欠格事由があり、相続人としての資格を有しない。したがって、原告らが相続人としての資格でした訴訟承継はその効力を有しない。
3. 被告一子は榮松の長女であり、原告らとともに、榮松の法定相続人である。ところが、原告らは、榮松の法定相続人のうち被告一子を除外して本件訴えにつき訴訟承継をした。したがって、原告らだけによる訴訟承継は不適法である。
三、本案前の主張に対する答弁
すべて争う。原告志満は、榮松についての禁治産宣告の審判前の保全処分として、榮松の財産管理者に選任され(浦和家庭裁判所昭和六三年(家ロ)第一〇〇八号)、裁判所の許可(同第一〇一七号)を得て、本件訴えを提起したものである。
四、請求原因に対する認否
1. 請求原因1、2の各事実は認める。
原告らの主張によっても、被告一子は本件土地及び本件(二)の株券につき法定相続分に応じた共有持分を有しているのであるから、原告らは、その各共有持分によっては、当然には、被告一子に対しその明渡しないし引渡しを求めることはできない。
2. 同3のうち(2)の事実は認めるが、(1)の事実は否認する。
本件(三)(四)の株券の株主は「小島志満子」となっているが、これを取得したのは榮松である。榮松は本件(三)(四)の株券を取得するについて「小島志満子」の名義を使用しただけであって、本件(三)(四)の株券の所有者は榮松であり、原告志満ではない。
3. 同4の事実のうち原告らが榮松の法定相続人であることは認める。
五、抗弁
1. 被告積は昭和六三年五月八日、榮松から、その時点で榮松が所有していた全財産の贈与を受けた。右財産には本件土地及び本件(一)(二)の株券が含まれており、したがって、本件土地及び本件(一)(二)の株券は右贈与により被告積の所有となったものである。なお、本件(三)(四)の株券も当時榮松の所有であったことは前記のとおりであり、贈与された財産にはこれも含まれている。
2. 訴訟引受人は平成元年二月二八日、当時本件(一)の株券を占有していた有限会社国際産業情報社から本件(一)の株券に係る株式の譲渡を受け、本件(一)の株券の交付を受けた。
六、抗弁に対する認否
1. 抗弁1の事実は否認する。
榮松はその妻である原告志満との間に被告一子をはじめ五人の女子をもうけた。被告積は長女である被告一子の長男であり、榮松・原告志満夫婦にとっては孫に当るわけである。榮松・原告志満夫婦は本件土地上にあった建物(後に、被告積による放火によって焼失)で被告一子と生活を共にしていたのであるが、榮松は昭和五九年ころから老人性痴呆の症状が顕著となり、昭和六一年一一月東京都小平市内の病院に入院した。
榮松は大手石油会社の役員を勤めたあと、安全石油株式会社を一代で築き上げた実業家であり、家庭のことは一切妻である原告志満に任せておくという、いわゆる明治の男であった。こうしたわけで、原告志満は、本件土地及びその上の建物の登記済権利証、榮松の実印及び株券を預り保管していた。ところが、昭和六二年一一月三日の夕食時、当時、外での生活を打ち切って、家に戻っていた被告積は原告志満に対し、いきなりみかんを投げつけ、手首をつかんで畳にたたきつけるなどの暴力に及んだので、原告志満は、身の危険を感じて外に出た。そして、翌日午前、被告らの留守を見計らって戻ってみると、原告志満の着物や座布団は引き裂かれ、室内は荒らされ、八畳間の押入れに、風呂敷に包んで保管していた株券類も消え失せていた。
榮松の実印は、原告志満において肌身離さず所持していたところ、その後、判明したところによると、被告らは、被告一子が代理人となって、榮松の実印について廃止届をしたうえ、別の印鑑について新たに登録手続をした。そして、被告らは、この印鑑を用いて本件土地について前記所有権移転登記をしたのである。
2. 同2の事実は不知。
七、再抗弁
仮に、訴訟引受人の主張が事実であるとしても、訴訟引受人は本件(一)の株券を取得する当時、これが有限会社国際産業情報社の所有に属しないことを知っていたか、知らなかったとしても、既に本件(一)の株券の所有権の帰属をめぐって原告らと被告らとの間に訴訟が係属中であることは調査をすれば容易に判明したことであり、訴訟引受人には本件(一)の株券が右会社の所有に属しないことを知らなかったことにつき重大な過失がある。
八、再抗弁に対する認否
争う。
第三、証拠<略>
理由
一、請求原因1、2の各事実は当事者間に争いがない。
<証拠>並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
1. 榮松と原告志満は夫婦であり、二人の間には被告一子、原告小山綾子、同中田幸子、同村田輝子及び同大田通子の五人の女子がある。
2. 榮松は大手石油会社の役員を勤めたあと、石油類及び科学製品の輸入販売等を営業目的とする「安全石油株式会社」並びに電気工事の設計及び施工等を営業目的とする「日の出興業株式会社」を設立して、その経営に携わっており、その住居である本件土地及びその上の建物をはじめ右両会社の株式を中心としてかなりの資産を有していた。ところが、榮松には昭和五三年ころから老人性痴呆の症状が見られるようになり、昭和六一年ころにはその症状が顕著となり、家人の手には負えなくなってきたので、原告志満は被告一子をはじめそのほかの娘たちとも相談のうえ、昭和六一年一一月、東京都小平市内の病院に榮松を入院させた。
3. 被告一子には夫・清悦との間に長女・早浪、長男・被告積の二子があったが、当時、被告一子は夫とは別居中(昭和六二年二月三日離婚)であり、二人の子も家を出ていたため両親と同居しており、榮松が入院した後は、原告志満と二人で暮らすこととなった。そうするうち、被告積が勤務先を退職し、大阪から戻ってきたので、これに被告積が加わり、三人の生活がはじまった。ところが、昭和六二年一一月三日の夕食時、原告志満が、何げなく、榮松に万一のことがあって、財産相続でも開始すると、相続税の負担に難渋する、という趣旨のことを口走ったところ、被告積は原告志満に対し、いきなりみかんを投げつけ、両手首をつかんで畳の上に押し倒すなどの挙に出た。原告志満は、被告積の異常な様相に身の危険を感じ、直ちに外に出て、同じ屋敷内に住む原告村田輝子のもとに逃げ込んだ。そして、翌日、被告らの留守を見計って、家に戻ってみると、室内が荒らされ、原告志満が一階八畳間の自室押入れに、風呂敷に包んで保管していた株券類はことごとく消え失せていた。
4. その後、原告志満は、家には戻らず、原告大田通子にものに身を寄せていたところ、その後に至って、被告らが、本件土地及びその上の建物について榮松から被告積への所有権移転登記をしたり、榮松銀行預金を払い戻そうとしたりしていることが判明したので、原告志満は、このままでは榮松の財産が散逸してしまうことをおそれ、その保全のため法的手段に訴えることを決意した。そして、原告志満は、弁護士の助言に従い、浦和家庭裁判所に対し、榮松について禁治産宣告の申立てをするとともに、審判前の保全処分としての財産管理者の選任の申立て(同庁昭和六三年(家ロ)第一〇〇八号)をし、その審判によって原告志満が財産管理者に選任されたので、その資格において、同裁判所の許可(同第一〇一七号)を得て、本件訴えを提起したものである。ところが、その訴訟の係属中である昭和六四年一月二日、榮松が死亡したので、原告らは本件土地及び本件各株券に係る所有権をその法定相続分に従って承継したとして、右訴訟につき承継の手続をした。
以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、原告志満による本件訴えの提起は正当な権限によるものであり、原告らによる訴訟の承継手続にも瑕疵はなく、この点に関する被告らの主張は、それ自体矢当なものか、事実の裏付けを欠くものであって、いずれも採用の限りではない。
そこで、被告らの抗弁について判断するのに、この点について、被告一子の本人尋問の結果中には、被告一子が、昭和六三年五月八日病床に榮松を見舞った際、被告積が榮松の跡を継いで会社の経営に携わる決意でいることを伝えると、榮松は、それならば、被告積に対し、株もやるし、不動産の名義も書替えよう、と言った旨の供述部分があるが、仮に、これが事実であるとしても、榮松の右の言葉は、贈与するという株式の種類・数量及び対象となる不動産並びに贈与の時期、方法及び手続等の具体的な事柄に全く触れておらず、これから直ちに、榮松が被告積に対し、本件土地及び本件各株券に係る株式を確定的に贈与する旨の意思表示をしたと認定するには不十分である。証人辻至子の証言及び成立に争いのない乙第二号証の一ないし三の記載も、これを補うほどのものではなく、ほかに被告ら主張の贈与の事実を認めるに足りる証拠はない。
そうであるとすると、本件土地について榮松から被告積への前記所有権移転登記がされていることは本件土地の所有権の行使を妨げるものであり、前認定の事実によれば、原告らは、榮松の死亡に伴い右所有権を相続により承継取得したのであるから、被告積に対し、それぞれ本件土地についてその法定相続分に応じて有する共有持分に基づき、共有物の保存行為として、右所有権移転登記の抹消登記手続を求めることができるというべきである。被告積が本件土地及び本件(二)の株券を占有していることについても右と同様であり、したがって、原告らは被告積に対し、それぞれその引渡しを求めることができるというべきである。
ところで、原告らは被告一子に対しても本件土地及び本件(二)の株券の明渡しないし引渡しを求めるが、前認定の事実によれば、被告一子も榮松の法定相続人の一人であり、本件土地及び本件(二)の株券につきその法定相続分に応じた共有持分を有するということができるから、原告らは被告一子に対しそれぞれの共有持分に基づいて当然にその明渡しないし引渡しを求めることはできず、そのためには遺産分割の合意が成立したこと若しくは原告らにおいてこれを管理する旨の合意が相続人間に成立するなどの事実が存在することが必要であるところ、この点については、原告らは何の主張・立証もしない。したがって、原告らの被告一子に対する本件土地及び本件(二)の株券の明渡しないし引渡しを求める部分は理由がない。
二、次に、本件(一)の株券に係る訴訟引受人の抗弁について判断する。
原本の存在及び成立に争いのない丙第六号証とこれにより真正に成立したと認められる丙第一号証によれば、訴訟引受人は平成元年二月二八日、有限会社国際産業情報社から本件(一)の株券に係る株式の譲渡を受け、本件(一)の株券を交付されたことが認められる。
弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる丙第五号証、前示丙第六号証によれば、訴訟引受人は宅地開発、ホテル経営等を営業目的とする会社であり、投機目的の株式売買なども頻繁に行っていたこと、本件(一)の株券に係る株式の売買取引は当時訴訟引受人の役員の一人であった栗林正善から持ち込まれたものであり、訴訟引受人は、予め商業登記簿謄本、営業報告書などの資料によって発行会社である安全石油株式会社の営業状態、資産内容等を調査、検討し、この会社を優良企業と判断して、取引に踏み切ったものであることが認められる。しかしながら、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第四〇号証によれば、本件(一)の株券の表面にはすべて「譲渡制限 当会社の株式の譲渡には取締役会の承認を要する」との記載があること、株券の裏面は名義書換手続を経た株主の登録年月日、取得者氏名(名義書換をした株主名)、会社印及び株券台帳との契印の欄になっているところ、ここには譲渡人である「有限会社国際産業情報社」の名称は全く顕れていないこと、そればかりか、右「取得者氏名」欄の最終の記載は「小島積」、その前の記載は「小島一子」となっているが、「登録年月日」の記載はなく、「会社印」欄には各本人のものと思われる印鑑による印影が顕出されており、正規の名義書換手続を経たものでないことは一見して明白であることが認められる。また、前示丙第六号証、証人三浦三男の証言により真正に成立したと認められる甲第三三号証並びに弁論の全趣旨によれば、本件(一)の株券に係る株式は、いわゆる非上場のものであって、流通性に乏しく、その市場価格も形成されてはいないこと、本件(一)の株券に係る株式数は安全石油株式会社の発行済株式総数の二分の一を超えるものであることが認められる。これらの事実によれば、訴訟引受人が本件(一)の株券に係る株式の譲渡を受けるに当っては、取引上、通常、要求される程度の注意を怠らなければ、当然に、株券の所持人である有限会社国際産業情報社が果してその適法な所持人であるかどうかについて疑問を生ずるはずである。そればかりか、右株式は譲渡制限が付されているものであり、その株式の、発行済株式総数の二分の一を超える株式が一度に処分されるというからには、その背景に何らかの重大な事情があり得ることであり、これを取得した場合、発行会社若しくは第三者との間に紛争が生ずるおそれのあることは想定するに難くないところである。したがって、訴訟引受人としては、右株式を取得するに当たっては、予め発行会社や株券に記載されている最後の「取得者」(名義書換手続をした株主)に照会するなどして、十分に事情を確かめるべきであって、訴訟引受人がこれをしなかったことには重大な過失があると認めるのが相当である。
そうであるとすれば、訴訟引受人は有限会社国際産業情報社との間の前記契約によっては右株式、したがって、これを表示する本件(一)の株券の所有権を取得できず、訴訟引受人がこれを占有することはその所有権の行使を妨げるものであるから、前述したと同様、榮松から相続によりその所有権を承継取得した原告らは訴訟引受人に対し、それぞれ、その法定相続分に従い、本件(一)の株券について有する共有持分に基づき、共有物の保存行為として、その引渡しを求めることができるというべきである。
三、<証拠>によれば、本件(三)(四)の株券は、それぞれの目録記載の日に、原告志満が取得して、所有するに至ったことが認められ、被告らがこれを共同して占有していることは当事者間に争いがない。
そうであるとすれば、被告らが本件(三)(四)の株券を占有することはその所有権の行使を妨げるものであるから、原告志満は被告らに対し、その引渡しを求めることができるというべきである。
四、よって、原告らの請求は右説示の限度でこれを認容し、被告一子に対するその余の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条但書、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。